「ユーカリはその根ざしが深い故に、梢のひろがりも逞しいのです」
(永松忠雄第9代校長)
武陽会会員の皆さまにおかれましては、ますますご清祥のこととお慶び申し上げます。また平素は武陽会並びに母校兵庫高等学校の発展へのご支援、ご協力をいただき誠にありがとうございます。
さてこのたび『武陽通信』が第100号発行となりました。このような記念すべき節目の年に我々武陽人にとって、大変誇らしい知らせが入ってまいりました。ひとつは書家で文化功労者の井茂圭洞先生(44陽会)の文化勲章受章のニュースです。新聞各紙や放送各局テレビのニュースで大きく報道され、皆さんも既にご存知のビッグニュースです。
もうひとつは高橋佑輔さん(105陽会)のアジア陸上選手権1500m準優勝です。大陸別の主要大会での銀メダル獲得は陸上競技部、ひいては全運動部にとっても学校創立以来の快挙と言えます。このような輝かしい栄誉、快挙を武陽会員の皆さんにお伝えできることは無上の喜びであります。
この100号の原稿を書くに当たって1952(昭和27)年から数回隔月発行された現武陽通信の前身にあたる「武陽通信」の発刊号や今に続く1958(昭和33)年『武陽通信』再刊第1号を読み返してみました。そこには学校創立当初の校風樹立の苦心や戦後の新学制の混乱への対応、新しい時代への先人たちの母校に寄せる情熱が文字となり、文章から献身的なご尽力がひしひしと伝わってまいります。また武陽通信ではないですが、昨年の小磯記念美術館での竹中郁・小磯良平展に提供された『十陽会誌』(1960年)には両氏をはじめ、武陽会元理事長瀧川勝二氏や金井元彦氏ら当時の武陽人の息吹を感じることができました。これら先輩方の進取の気性や母校愛が兵庫高校の発展や後年の島田叡氏事跡顕彰の大事業達成に結実したことは明白です。
同窓会誌であり校友誌である『武陽通信』は、母校の様子や会員の消息を伝える単なる情報紙ではなく、その時代々々の現役生を含む武陽人の足跡を伝えるとともに、その発行の使命は発刊以来、母校の歴史や伝統に命を吹き込むことであり、未来へ繋ぐことであります。四綱領「質素剛健自重自治、これを達成するに至誠を以てす。」に基づく伝統の継承に『武陽通信』はこれからも役割を果たしていかなければなりません。どうか一人でも多くの会員の皆さんに読んでいただき、武陽通信を通じて母校発展の一翼を担っていただけるようお願い申し上げます。
最後に過去から現在、そして未来へのメッセージとして、1958(昭和33)年再刊第1号中の永松忠雄校長のお言葉(挨拶文から)をご紹介します。
「わたくしたち自身、今の兵庫魂の源泉をたどるとき、何のためらいもなく、二中精神への契合を自得せずにはいられないからです。この深厚な伝統のエスプリに、強く背後から押されていればこそ、わたくしたちは正しいひたぶなる前進ができるというものでしょう。四綱領、それも校風というよりもむしろ気質的なものにまで浸透したその精神こそ、平和とか、民主主義とかいう新時代の理念を、実践的な倫理へ形成してゆく原動力であると信じます。本当に有難い事だと思います。ユーカリはその根ざしが深い故に、梢のひろがりも逞しいのです。わたくしたちは、保守的な剛気とともに、革新的な気魄も失いたくありません。云々。」
令和5年12月
武陽会理事長
65陽会 新 居 大 典
バックナンバー:
武陽会理事長就任のご挨拶(令和5年12月)